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上海旅行② 空港税関の憂鬱

 年に3、4回上海に出かけていると帰国時、税関職員から毎度毎度同じ質問をされます。「なぜ上海へ頻繁に出かけるのですか?」

 ビジネスでも観光でもなくしかもしょっちゅう出かける、おみやげを持っていない、手荷物もない、着替えすらない……これはかなり怪しい。きっと上海の裏社会とつながりがある……。このように税関職員様は想像しているようです。

 でも、そうではないのです。おみやげはあげるべき人がいない、着替えがないのはホテルで夜のうちに洗濯してバスタオルで水気を切り、ドライヤーで乾かして翌日また同じものを着るから。

 40年も一人旅を繰り返しているうちに旅具は極端に少ないのが一番、本当は手ぶらがベストであることを学びました。財布とパスポート、スマホ以外何も要りません。旅行日数が長くなればなるほど荷物を持たないのが快適な旅のコツです。

 さて、税官吏の一番の関心事である私の素行ですが、職員は私に「上海のどこで何をしたのか」と聞いてきました。私は「そんなプライベートなことにはお答えできません」と返事を拒否。しかし改めてどこで何をしたのか思い出してみると、食べる、寝る、町をうろつく、地下鉄やバスに乗る……ぐらいしかしてないのです。今回はフィギュア・スケート観戦という充実した時間を過ごすことができたのですが、いつもは本当に何もしないでただゆっくりした時間を過ごしています。

 旧フランス租界は今でもシックな町並みが保たれ、素敵なカフェやレストランがそこここにあります。フレンチの店でフランス人のガルソン(ボーイ)相手によもやま話をするのが好き。もう何十年もしゃべったことのないフランス語が案外調子よく口から出てくるのはおいしいボルドーワインのせいでしょう。

 プラタナスがトンネルを作る裏通りに面したカフェではスマホがWi-Fiでつながりタダで日本まで長電話できます。日本語でしゃべっていても中国人のお客が殴りかかってくる心配はありません。なにしろここは洗練された旧フランス租界。粗野な中国流マナーは通用しません。

 今度税関でまた同じことを聞かれたら、上述のようなとりとめのない話を「起きて寝て……」と延々聞かせてやろうと思います。

本誌:2012年11.26号 12ページ

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