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連載記事

恐怖の高速ツアーバス

 連休中の交通事故件数は例年より少なかったという新聞記事を見て思わず“ウッソー”とうなってしまいました。が、統計的にはそれが事実なのでしょう。

 しかし記憶としては、連休前にあちこちで発生した登校途中の学童の列に車が突っ込み大勢の痛ましい犠牲者を出した事件に高速ツアーバス居眠り運転事故の衝撃映像が重なり、日本の道路行政、運輸行政、通学路の安全確保等はいずれもお寒い限りだということが露呈したのが連休前後の約3週間でした。

 私自身2、3年前、岡山・東京を往復するのに高速ツアーバスをよく利用し本欄にも体験記をつづったことがあります。ツアー代金は鉄道の半額から4分の1だし夜行なので宿泊代と移動中の時間が節約できることが最大の魅力でした。

 岡山路線は各社とも距離(約700㎞)の制約から乗務員が1人で運転することは許されず、実際私が乗車したどのバスにも交代の運転手がいました。しかしある会社のバスは車内にトイレがないのにいったん岡山を出発したら最初のトイレ休憩は何と岐阜の養老SAという強行軍で大変驚きました。途中でトイレに行きたくなることがないよう車中での飲食は極力我慢したものですが、その間運転手が過酷な状態の中でバスを運転していることには想像が及びませんでした。2回目のそしてそれが最後の休憩地だったのは何と神奈川県の海老名SAでした。

 今回の事故の詳細が明白になるにつれ、もし乗車前にそれが分かっていたら200%、誰もこんな危険なバスには乗らなかったでしょう。無責任な会社、違法であるうえ過酷で低賃金、孤独な日雇い運転手。しかも中国出身のこの運転手は今回の運行経路に土地勘がなく道路案内標識を十分理解するだけの日本語能力に欠けていたといいます。

 さらに何よりも許し難いのがこのようなバスが深夜日本中の高速道路を走っている現状を放置・是認してきた国土交通省の無為無策無責任行政です。国交省に限らず、些細なことには口うるさく規制する割に肝心のところで大抜けしている日本の行政システム。これを総点検することは今や待ったなしの行政課題です。

 犠牲となられた方々、突然身内や友人・知人を失った遺族、関係者の皆様に深く哀悼の意を捧げます。

本誌:2012年5.21号 15ページ

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