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2011年も終わりに

 年々、1年が過ぎていくのが早くなっているような気がするのはいつものことですが、今年に限っては若い世代の人々も同じようなことを言います。なぜあっという間に1年が過ぎてしまった気がするのか、その理由をちょっと考えてみました。

 1000年に1度の大震災と原発爆発という日本の歴史上かつてなかった大惨事が3月に東日本で起きて以来、首相交代程度のつまらないニュースにはいちいち心が動かなくなりました。いわば空前絶後の悲惨な事態を前にして、ほかのいっさいのことがかすんでしまい、まるで記憶に残るような大きな事件は何もなかったかのような錯覚に陥ってしまった、これが日本人に共通した心理状態ではないでしょうか。こんなとき時間は駆け足で空しく過ぎていきます。

 狂ってしまった時間感覚を正常に戻すためには、震災からの復興と原発に対して今後どう対処していくのか国民が覚悟を決めることが一番だと思います。政府と東電が脱原発に対してはっきりした方針を示さないまま場当たり的な事故収束に明け暮れる中、年末になって地方が動き始めました。

 福島県の佐藤知事は11月30日に記者会見を開き「国と東電に対して、県内の原発10基すべての廃炉を求める」と復興計画に明記することを発表。大英断です。知事の決断に先立って10月、県議会が全原発廃炉の誓願を賛成多数で議決していますので福島県民の決意は本物です。

 私は内心、いったん原発マネー依存体質になったら、例え今回のような重大事故が起きても全廃に踏み切ることは困難ではないかと思っていたのですが、県民総意で全廃を打ち出したところに福島の深い絶望と再生への希望を見る思いがします。

 一方、原発銀座と呼ばれる福井県は福島ほど危機感がないのか、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を除いて、脱原発の話は聞こえてきません。しかし、関電の筆頭株主でもある大阪市長に市民の圧倒的な支持を得て橋下徹氏が当選し、記者会見で橋下さんは株主の権利を行使して関電に脱原発を求めていくと話しています。

 主体的に動かない政府と東電に対しこれら地元が明確な態度を表明したことで、やっと狂った時計がまた正常な時を刻むようになった気がします。来年に希望が出てきました。

本誌:2011年12.12号 18ページ

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