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バンコク冠水

 タイの洪水はますます勢いを増し、ついに首都バンコクも広範な地域で冠水が始まったようです。ほとんど海抜ゼロの真っ平らなバンコクでは洪水は、日本のように降った雨が鉄砲水になって襲いかかるのではなく、じわじわ町全体を浸潤してきます。こうなってはじたばたしても逃げようがありません。

 実際、洪水に襲われているバンコク市民の日常風景をテレビで見ると、たくましいというか肝が据わっているというかおよそ日本では考えられないような光景です。

 屋台で食事をするいつもの見慣れた光景、でもよく見るとお客も料理を作っている店の人もすねから下は水に浸かっているのです。川の泥水に生活排水がミックスした不潔な水、養魚場から逃げ出した魚やエビが泳いでいそうな水に足を浸けながらよくものんびり飯なんか食えるなと感心します。

 しかし長引く洪水に対して有効な対策を取れないインラック政権に市民の不満は爆発寸前。が、そもそもタイの洪水は何も今に始まったことではなくもともとチャオプラヤ川のデルタ地帯にできた巨大都市にとって水問題は第一の政策課題であるにもかかわらず今まで有効な手立てをしてこなかった歴代政権の失政によるものであることは明らかです。

 かつてバンコクの市街地にはベネチアのように運河が縦横に走っていました。小さな船が交通の主要な手段であり、人々も半水上生活に適応していました。これなら少々洪水がきても水が自然に引くのを待っていればよかったのです。ところが現在ほとんどの運河は埋め立てられ、市街地は排水機能を失いました。夕立の雨さえすぐに行き場を失って道にあふれてきます。

 今年は日本でも東日本大震災では広範な地域が巨大津波に流され、また秋には台風に伴う大雨によって紀伊半島に大きな被害が出ました。それでも日本は古来、治山、治水を国是としてきた甲斐があって今バンコクで起きているような事態に国民が苦しめられるようなことはまずありません。

 岡山でも洪水被害者に対する募金活動が始まりましたが、日本がタイにできる最大の援助はこれまで日本が培ってきた高度な治水技術のノウハウを資金とともに提供することではないでしょうか。

本誌:2011年11.14号 12ページ

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