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[知的財産] 侵害行為の検出可能性

Q : 弊社工場内で実施している化学反応において、反応圧力を従来の5 ~ 6 倍にすることで、従来の技術常識とは逆に、副反応も抑えられ収率が大幅に向上しました。製品品質は全く変わりませんが、特許がとれますか。

A : 特許出願すべきか考えどころ

その化学反応の反応圧力を増加させると、副反応が増加し収率が低下するという従来常識に反し、今回、従来の5 ~ 6 倍に圧力増加させることで副反応が抑制され収率が大幅に増加したのこと。反応圧力を従来の5 ~ 6 倍とすることによるこの結果は予想できませんので、果が顕著であるとして特許の可能性があると思われます。

ところが、この内容を本当に特許出願してよいか疑問です。特許出願することは、特許可否を問わず、その内容を開示( 出願公開) することになり、競争相手を含め他人にその内容を知り模倣する機会を与えます。こう説明しますと、「特許されれば、自分の独占権だから他人は模倣できないでしょう」と反論を受けることがあります。しかし、自分の特許権の内容を他人が模倣( 侵害) していることを自分が認知できなければ、他人の模倣( 侵害) 行為を問題にすることはできません。

ご質問の内容を考えれば、貴社同様、競争相手もこの反応を工場内で行うものと考えられ、競争相手の工場内における反応圧力が従来の5 ~ 6 倍であることを貴社が知ることができないのであれば、貴社特許権の内容を競争相手が模倣( 侵害) していても手出しできません。もっとも、反応圧力を従来の5 ~ 6 倍とした場合、製品に変化が現れる( 例えば、製品の分子量変化や分子の分岐が生じる) のであれば、それを手がかりに模倣( 侵害) 発見が可能なこともありますが、本件は製品品質に変化はないとのことですので、それは難しいのではないかと思われます。

以上の通り、本件の内容に関しては、将来の権利行使の可能性と、開示( 模倣チャンス付与) のデメリットと、を比較し、出願すべきか否かを十分検討する必要があります。特許出願しない場合には、この内容を貴社内のノウハウ( 秘密情報) として外部に流出させないよう措置を講ずると共に、その後に他人が特許出願して特許権を取得した場合でも貴社がその内容を継続的に使用するための権利( 先使用権) を貴社が保有していることを証明できるよう証拠等を収集準備しておくべきです。

笠原特許商標事務所
弁理士・所長
笠原 英俊氏
岡山市北区野田2-7-12
TEL086-245-0440

本誌:2011年9.12号 25ページ

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