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草食動物の勝機

 3月11日に東日本を襲った巨大地震と津波、そしてそれによって引き起こされた福島原発のメルトダウンという1000年に1度あるかないかの大惨事に国全体が打ちひしがれている中、なでしこジャパンがワールドカップで優勝するというこれまた100年に1度あるかないかの快挙は見事でした。

 優勝候補のドイツ、スウェーデン、アメリカ人選手のあの高さ、あのガタイ、スピード、パワーを前にしてか弱い“なでしこ”に勝機があるとはだれも想像していませんでした。

 ちょうどドイツ戦の前日、たまたまドイツの友人ウド君が私の誕生日祝いにメールをくれていたので、お礼の電話をかけました。ひととおりよもやま話をしたあと、ウド君が「ところで明日のサッカーの日独戦どう思う?」と聞いてきました。

 正直いって女子ワールドカップにほとんど注目していなかった私は返答に困りながらも、「身長差があれだけあるのははなはだ不利ではあるけれど、ドイツの選手は背の低いチーム相手の試合には慣れてないだろうから、その辺が日本にとって有利かもしれない…」などとコメントをしました。そして日本はそのように勝ち進みました。

 圧倒的なパワーとスピードを誇る欧米チームに伍して金メダルに輝いたのはわが“なでしこ”。勝因をめぐってはいろいろ専門的な分析がなされていますが、私なりに考えてみると、欧米チーム対日本の戦いは肉食獣対草食獣との戦略の違いのようなものがあったのではないかということです。

 ライオンやチータなど肉食獣がサバンナで群れをなす草食獣に狙いをつけて忍び寄る光景。草食獣に勝ち目はないと思われるのですが、案外草食獣は機敏に方向転換を図りながら逃げ切ります。最初の一瞬を逃した肉食獣はすぐにスタミナ切れを起こして長追いはできません。

 粘りに粘って延長戦に持ち込んで競り勝った日本の戦いぶりは理にかなったものだったと思います。映像的にもピッチの上で何か種類の違う2種類の競技が行われているような印象を受けました。

 こうしてみると来年のオリンピックに向けたアジア予選はある意味欧米チーム相手より手ごわいかもしれません。草食同士、おのずと戦術に工夫が要りそうです。

本誌:2011年夏季特別号 18ページ

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