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朝食ビュッフェ

 旅の楽しみはいろんな土地でいろんな食べものに出会うことに尽きるといっても過言ではありません。ところが、国内でも国外でもホテルの朝食といえばセルフサービスのビュッフェと相場が決まっています。

 所狭しと並べられた大皿は遠目にはどれも豪勢に見えるのですがいざ自分の皿にとって見るとベーコンエッグ、焼き飯、パン、サラダ、スパゲッティ、ワカサギの甘露煮、チンゲン菜のうま煮、シューマイ、ライチ…と突飛な組み合わせの食材がゴテゴテ盛られ何だか食べる前から残飯状態です。

 でも団塊世代の人間としては仕方ありません。子供時代ずっと食べるものに事欠いて育ったせいか大皿いっぱい並んでいる料理を見たらたちまち理性をなくしてしまい、経験的にはかなりの高級ホテルの朝食と言えども大したことはないと分かっているのに、とりあえず一通り取ってみないと気がすまないのです。そして常に満足感なき満腹感とともにレストランを後にします。

 それでもたまにはビュッフェで珍しいものに遭遇することがあります。先日台北のホテルで思いがけず生まれて初めてベーコン巻のマコモを食す機会がありました。タケノコとアスパラガスをミックスしたようなさっぱり味の珍味で、日本ではお目にかかったことがありません。大皿に20本ほどあったのを1人で3本もとってきました。

 ノルウェーの小さなホテルでは朝食にニシンの酢漬けやスモークサーモン、ボイルした手長エビなどがハム、ソーセージ、チーズなどとともに並べられていました。そこの朝食は世界標準のビュッフェ料理とは一線を画す印象深いもので、ひとつひとつの素材に料理人の魂と土地の味がこもっているような気がしました。

 日本の観光旅館のさりげない朝食も捨てがたい魅力があります。夜の宴会で名物料理をたらふく食べ最後は雑炊までかきこんで身動きならない状態のまま寝たというのに、朝になれば食欲は復活しています。

 炊きたてのご飯にアジの干物、ノリ、卵、つくだ煮、味噌汁で構成された旅館の朝食をご飯一膳で済ますことは不可能。外食チェーン店のチリ産のサケを使った焼き魚定食とは比較にならない美味しさです。やはり素材のレベルが10倍ぐらい違うからだと思います。

本誌:2011年7.25号 17ページ

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