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地デジ移行

 来年のいまごろテレビのアナログ放送は完全に終了しているのでしょうか。私自身地デジ問題が差し迫っているというのに何も考えていないし、身近な人に聞いても多くの人が何もしていないといいます。

 これまでの技術革新の歴史では新しい方式のものが導入されてもただちに古い方式が棄てられるということはありませんでした。1925年に放送が開始されたラジオはおよそ100年後の今でも基本的には原初のスタイルを保っています。

 子供のころ雑誌を見ながら組み立てた鉱石ラジオや真空管ラジオは探せば物置の片隅にまだあると思いますが、ちゃんと放送を受信するはずです。FM放送が開始されたからといって中波や短波がなくなったわけではなく、今後も永遠に今の方式は続くでしょう。

 電話もそうです。固定電話は今やジリ貧というか最初からそんなものは設置していない世帯も多いのですが、だからといって50年前の黒電話が使えなくなるということはありません。

 それなのになぜかテレビだけが現行の方式を完全に棄てるという暴挙に出ました。VHFの電波帯を他のメディアのためにより有効に使うという大義名分は一見もっともらしいのですが問題はいろいろあります。

 年寄りには地デジの意味さえ理解できません。子供らが最新式のデジタルテレビを買ってあげてもあまりに複雑なリモコンにはお手上げです。お年寄りにとっては使い慣れたリモコンですら次第にチャンネルが換えられなくなり、そのうちエアコンのリモコンとの区別がつかなくなります。

 地デジ移行は性急すぎます。ベータ方式のビデオデッキが消えていったように、そしてVHSも過去の遺物になりつつあるように自然にアナログ受像機が消えていくのを待つべきではないでしょうか。

 とにかく、来年7月には200万から300万世帯の人がテレビ難民になるのは明白で私もその1人です。しかしものは考えよう。いざとなればワンセグがあるし、そもそもテレビに時間を盗まれない分だけ豊かな生活が始まるのではないかという期待もあります。

 アナログ放送の終了はそのままテレビ時代の終焉の始まりであるような予感がします。

本誌:2010年夏季特別号 24ページ

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