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句点

 読売新聞に平野啓一郎の小説『かたちだけの愛』が連載されています。会話の文体に独特のリズムがあることに気付き、それが何なのか、字面を凝視していたら句点“。”の使い方に特徴があることが分かりました。

 「若くないですよ、もう。」(第183回掲載分より)

 この1文に違和感を感じたら相当読書の達人だと思います。大多数の出版物では次のようになっています。

 「若くないですよ、もう」

 違いは句点があるかないかです。いったいどちらが日本語として正しいのか、どうでもいいような問題ながら気になります。

 こうした国語の表記問題に基準となる指針を出しているのが文化庁ですが、“「 」の中でも文の終止にはうつ”とうたっているものの、出版界などにそれを強制してきた事実はありません。

 実際、教科書等では文化庁の指針どおり“。」”方式で教えているのに対し、新聞、出版、雑誌メディアは句点を付さないという社内指針を設けているようです。

 ではなぜ晦渋な擬古典調の文体を駆使する平野氏が句点を積極的に使っているのかというと、おそらく氏にとって“」”には文の終りを示す機能がないとの確信があってのことだと推察されます。

 そう思ってあらためて平野氏の小説を読んでみると、「句点があるのもなかなかよいではないか、文章に締まりがあって……」と思えてきました。

 ところで上の行にある“…”にもちゃんと名前がありました。「3点リーダー」。いままで私は適当に“・・・”(中黒3つ)や“、、、”でごまかしていましたが、3点リーダーを2個使うのが業界の慣例とか(点の数は全部で6個)。

 平野氏の小説をきっかけに、国語の正書法があれこれ気になり始めました。私も内容はともかくせめて“かたちだけ”でもプロっぽい文章が書けたらなと思います。

本誌:2010年3.22号 14ページ

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