WEB VISION OKAYAMA

連載記事

“私鉄”という誤解

 国鉄が民営化されて20年以上になります。民営化されたのだからJRも“私鉄”かと思ったらそうでもないらしく、もともと民営だった近鉄や阪急などとは区別されています。

 さてこの“私鉄”という言葉、英語ではprivate lineと表現されていることが多いのですが、和英辞典を参考に直訳したようなこの言い方では、私鉄など存在しない国の人には思いもよらない誤解を与えるものだという経験をしたことがありますのでご披露します。

 1982年の夏、知人を訪ねて戒厳令下のポーランドに行ったときのこと、大阪府庁が作成した大阪の地政学、産業、文化等を紹介する英文パンフをポーランド人に見せました。

 しばらくパンフを見ていたそのポーランド人は突然「日本にはとてつもない大金持ちがいるんですね」と驚きとも溜息ともつかない声を上げました。

 パンフレットのどこを見てそんなことを言い出すのかと思ったのですが、謎が解けてみるとまるで笑い話でした。近畿地方の略図に描かれた国鉄(当時)の路線はTokaido Line などと個別路線名を記載してあったのに対し、私鉄はどれも細い字でprivate line としか書かれてなく、このprivate の一言が誤解の元でした。

 private line を民営鉄道ではなく、文字通りプライベートな鉄道と思ったらしいのです。確かに、奈良公園に向かうprivate lineは奈良を統治する大富豪一族専用列車と解釈できなくもない!

 私は「プライベート(民営)と言ってもパブリック(公共)の鉄道ですよ」と説明してポーランド人の誤解を解きました。

 では、パンフレットで私鉄をどのように表現していたらよかったのかというと、具体的にKintetsu Line、Hankyu Line などと路線名を挙げておけば妙な誤解をされずに済んだのではないかと思った次第です。

本誌:2008年6.23号 16ページ

PAGETOP