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社長は借り入れ保証をするな 倉敷芸科大教授 後藤 裕

 中小企業が銀行から資金を借り入れる場合、通例、社長が借入保証をする。そのため、企業が金融機関から資金を借入するたび、印鑑証明書と個人の実印を保証書に押印しなくてはならない。

 そこで、銀行に借入保証をする理由を聞くと「形式的なものですから」と返事する。しかし、借入保証するのは、会社が返済できない時に保証人に返済させるというわけだから、単なる形式的なものではないはずである。

 借入保証には、連帯保証契約と保証契約の2種類がある。連帯保証ということは保証人全員が連帯して全額保証するものである。

 銀行が取引を開始する時には、不動産物件などに担保設定した上に、企業の代表者に限度額の包括保証を求め、さらに個別取引で連帯保証契約を要求してくる。

 これは二重の保証をすることになるのではないか。ここで、企業の代表者が保証しないで銀行取引を実現した実例があるので、紹介しておく。

 G社は創業40周年を迎える企業だが、銀行借り入れする時には、社長が連帯保証をしていた。社長が自宅から実印と印鑑証明書を銀行に持参していたのである。

 ある時、社長は息子Yに「自宅に行き実印と印鑑証明書3枚を取ってこい」と指示した。Yは社長の自宅に行き、社長夫人にその旨を伝えた。

 すると夫人は「会社のために印鑑証明書を出しても、何のお礼の言葉もない。会社は保証人を設定しないで借り入れをすべきだ」ときっぱり。

 Yも考えた。「銀行が工場の設備や土地を担保設定して、社長が包括保証しているのに、個別の取引で、さらに連帯保証する必要はないのではないか」。これを社長に進言した。

 社長は「理屈では分かるが、取引上の慣例となっている。しかし、一度銀行と交渉してみるのもいいか」と対銀行交渉を許した。

 YはS銀行と交渉に入った。銀行側は「工場の土地建物と機械設備に根抵当権を設定、代表取締役が包括保証しているのは事実であるが、個別取引で連帯保証するのは銀行の内規で決められており、二重保証ではない。多くの融資先は以前から了解している」と回答してきた。

 Yは反論して「企業が借入金を返済できなければ、連帯保証人が代理弁済することになる。もし、連帯保証人が、借入金が巨額過ぎて返済できなければ、連帯保証人の意味をなさないのではないか。この際、担保物件を見直すことで担保価値の増額を図り、連帯保証人の削除をしたい」と再度申し入れた。

 最後にYはS銀行に対して「当社は上場企業の株式を大量に保有している。連帯保証人の包括保証を削減する替わりに、上場株式を担保設定することによって、借入契約を実行してもらいたい。もし、貴行が当社の要請を拒否するのであれば、貴行との借入基本契約を再考する」と繰り返して要請した。

 3カ月後、S銀行は「貴社の要請を検討した結果、上場株式の含み益の評価を80%で評価することを条件に連帯保証人を削除することにする」と回答してきた。

本誌:2007年11.19号 23ページ

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