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トップの金銭感覚 倉敷芸科大学教授 後藤 裕

 最近、倉敷市内でも、若い人が海外メーカーの高級乗用車を運転しているのを良く見かける。若い人はそんなに所得があるわけではないので、高価な高級乗用車を購入するため自動車ローン等を使用していると考えられる。

 しかし、収入が安定的に確保できている場合は良いのだが、収入が減少し始めるとローン債務が荷重になって返済が滞るようになる。

 企業で不必要な借り入れがあると、不景気になり売り上げが低迷すると、資金不足が発生して企業の存亡の危機を招くことになる。

 だから、企業経営では「いいカッコする」ことは禁物である。ある2代目経営者が「いいカッコした」ことで、社内の批判にさらされた実例を挙げておきたい。

 G社の経営者の息子であるYが、G社の子会社であるJ社に赴任した時のことである。J社のある新潟県は豪雪地帯として有名で、冬季になれば3m以上の積雪になる地域だった。

 道路には自動車の車輪の轍(わだち)が残り、圧雪した道路は自動車の“ハラ”を擦り、他の自動車が立ち往生することが多かった。雪道の運転は非常に難しく急ブレーキ踏むと、自動車がスリップして交通事故を引き起こす。

 冬場には、Yが居住していた長岡市(新潟県)からJ社までの道路は圧雪道路になり、通常30分で行ける所が1時間以上も要した。Yは社長に相談したところ「自宅から会社までの有力な交通機関がない状態では仕方がない。4輪駆動車を購入しなさい」ということだった。

 Yは4輪駆動車を購入することにし、いろいろなケースを考えて6人乗りの4輪駆動車を購入した。1カ月後、Yは6人乗りの4輪駆動車で出勤した。J社の社員にとって6人乗りの4輪駆動車は喉から手が出るほど欲しかったが、所得が低かったため購入することができなかった。

 それを見た社員から「Yが会社を再建したからといって何をしてもよいというのはおかしい」との声が出た。社員がYを批判したのは4輪駆動車の支払いを会社負担にしたからだ。

 たまたまJ社を訪問したG社の経理部長はYに対して「4輪駆動車が必要なのは理解できるが、6人乗りというのは少しやり過ぎではないのか。しかも個人で使用する場合が多いことを考えると、派手過ぎる。会社の資金で購入する時には、社員や管理職と良く相談するように」と苦言を呈した。

 経理部長から報告を受けたG社の社長は「6人乗りは派手だ。それに、ほとんど個人で使用するものを会社の資金で購入するなど、お前の金銭感覚を疑う。いくら企業経営が軌道に乗ったからといっても、自分一人の力で経営再建ができたわけではない。現地のトップに浪費癖があるのには困ったものだ。会社が支払った自動車の代金を24カ月分割で返済せよ」とYに命じた。

 Yが購入した6人乗りの4輪駆動車は250万円だったので、毎月10万円ずつJ社に返済した。その後、Yは公私混同を止め、できる限り社員の気持ちを考えて節約に努め、高額と思われるモノの購入に関しては管理職と相談することにしたのである。

トップが社員の信頼を得るということは、こう言うことである。

本誌:2007年6.18号 17ページ

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