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赤ちゃんポスト

 明治5年生まれの祖母が父に語った話しでは、生家のあった白石(岡山市)近くの笹ヶ瀬川を赤ちゃんが流れていくのを目にすることが時おりあったそうです。

 もしかすると、桃太郎伝説はそういうふうに流された赤ちゃんを川沿いに住んでいた老夫婦が助けて育てた、などという出来事がルーツになっているのかもしれません。

 熊本市の慈恵病院が、日本では初の赤ちゃんポストを設置するというので、いろいろ物議をかもしていましたが、いざ運用を始めたら、その日の内に父親らしき男が3歳ぐらいの男児をポストに入れたという驚くべき事実が報道されました。

 これに対し、柳沢厚労相は「誠に遺憾」と表明、また、高市少子化担当相は「子供を産み育てるのは親の責任」と建前論を述べています。

 しかし、赤ちゃんポストを設置することが子捨てを助長するなどというのは、本末転倒の議論ではないでしょうか。言い換えればポストに置かれたからこそ、この男児の命が助かったのであり、ポストが無かったらいずれは虐待か、育児放棄の危険に晒されていたに違いありません。

 “無責任に”赤ちゃんを産んでも国や地域社会が受け止めてくれるという保証があれば、むしろ、年間何十万人という赤ちゃんが堕ろされているという、よりおぞましい情況が少しでも改善されると読むのは間違いでしょうか。

 幸い、今回の件では警察も慈恵病院も冷静な対応をしていることに救いがあります。1人でも命が助かるのなら赤ちゃんポストは存続させるべきだと思います。

 命さえあれば、やがては桃太郎のようにいい里親にめぐりあい、出生時の不幸を乗り越えて自分自身の人生を歩むことができるのですから。(康)

本誌:2007年5.28号 14ページ

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