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連載記事

社内ムード改革のコツ 倉敷芸術科学大学教授 後藤 裕氏

●「愚痴」一掃で信用創出●

 倉敷市内の商店主に話を聞くと、「売上高がなかなか戻ってこない」という。そこでくらしきTMOが中心になって倉敷駅前商店街を活性化するため、「三斎市」という朝市が開催されてきた。

 しかし商店街の売り上げが伸びないことから、朝市が開催されているにもかかわらず、店舗のシャッターを閉め営業していない店舗がある。

 そこで、私は倉敷市民がこぞってショッピングする「イオンショッピングセンター」を訪問してみた。倉敷商店街との違いは、若い店員が意欲的に働いていて、商品の種類が多いことと夜9時頃まで営業していることである。

 イオンの店舗では、「景気が良くないので、売り上げが上がりません」というような他人事のような愚痴は全く聞こえない。店舗経営者は「愚痴を言って売り上げが上がるわけではない」ということを認識するべきである。

 私が体験した実例を紹介し、「いかに愚痴が社内ムードをダメにするか」ということを指摘しておきたいと思う。

●「愚痴」より「長所」に目を向けよ

 ある自動車部品メーカーT社での話。T社は受注金額の90%近くをH自動車メーカーから受注していた。T社社内では、従業員の多くが「当社はH社の下請けだ」と言って業績向上の努力をしてこなかった。

 だが発注側のH社は史上最高の利益を計上した。T社の社長は従業員に対して「なぜ、当社は業績が改善されないのか」と質問した。すると従業員は異口同音に「当社は下請け企業であり、少し利益が上がると次年度の発注価格が引き下げられるため業績がなかなか伸びない」と返答した。

 社長は「H社が利益を吸い上げていると言うが、当社のライバル企業は収益を上げているではないか。当社は単に自動車の部品を納入しているのではなく、技術を納入していると考えるべきである。赤字になるのは、当社の技術力が陳腐化している証拠である」と反論した。

 一部の幹部は「納得できない」と言ったが、社長は「愚痴をこぼしても収益が上がるのか」と檄を飛ばした。さらに「今後、当社は技術開発型企業と位置づけ、積極的に技術を開発し、その技術を販売するプロ集団と位置づける。従業員個々人が他人の批判や悪口を言わず、長所を大いに宣伝してもらいたい」と従業員に明示した。

●前向きな社内ムードが信用や利益を呼ぶ

 T社内には、技術開発や業務改善のためのプロジェクトチームが設置され、休日も返上して運営された。3カ月後、社長が取引銀行を訪問した際、銀行の幹部から、「御社の従業員は今までのように社長の悪口を言ったり批判をしたりしなくなり、むしろ当社の社長はすばらしいと、ほめるようになった。我々も御社の長所を見つけるようにしたい」という発言があった。銀行はT社に新しく資金を供給することを約束した。

 さらに納入先の自動車メーカーH社は、「社長のことを批判せずに尊敬して営業している姿に感動した」と言い、「新製品開発に協力してもらいたい」と要請してきた。困難な状況を解決し信用を高めたければ、「愚痴」を言わずに目標に向かって苦労するしかないのである。

本誌:2007年5.14号 15ページ

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