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十字屋文庫館

 真庭市の鹿田地区(旧落合町)に“十字屋文庫館”という大変立派な私設図書館があるということを、行きつけの喫茶店のオーナーから聞いていました。ぜひ一度お伺いしたいと思っていたところ、4月下旬、同じ敷地内にある旧土屋邸完成見学会があるという案内があり、さっそく出掛けてみました。

 文庫館は、館長の牧生夫さんが古い郵便局舎を買い取り、建物の外観はそのままに内部を快適な図書館に リモデルされたものです。1階は児童書、2階は「漱石全集」など、主に個人全集を中心に蔵書が構成されているように見受けられました。

 牧さんのお話によると、自ら神田の古本屋街を訪ねて図書の選定をされたそうです。古今東西の名著中の名著が厳選され排架されている様はまさに壮観でした。

 文化的な環境に恵まれない山村の地で、私財を投げ打ってまでこのような文化的交流点を設けられたことは「十字屋」という商号の精神にピタリと照準が合ってのことに違いありません。

 牧さんの肩書きは大正5年創業の株式会社十字屋及び昭和46年創業の真庭環境衛生管理株式会社の代表取締役。本業から得た利益を惜しげもなく社会福祉・文化事業につぎ込まれるところは先代譲りのようです。

 さて、古民家を再生した土屋邸は、 中庭を取り囲むように和室が配置され、 座敷から見る庭の花木や新緑が眞に目にさやか!こんなにも豊かな空間のあり方が存在するのか、という居心地のいいものでした。

 たった1日でいいから、親しい人と共にこのような家で目覚めることができたなら、人生に欠けていることはもう余りない…そう思えるような気がしました。

本誌:2007年5.14号 12ページ

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