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巻頭特集岡山県の入札制度改革

ストップ談合  「死活問題」と反発、地元建設業界への影響は

  • 一般競争入札が1000万円以上に拡大されればこのような小規模工事も対象に(岡山市内)

 岡山県が策定した入札制度等改革推進計画と具体的な運用方針について、地元の建設業界が反発を強めている。一般競争入札(条件付)の段階的な拡大や地域要件の設定で地方業者に配慮した形だが、それでも対象を最終的に1000万円以上の工事にするため影響は大きい。確かに談合は良くないが、公共投資の縮小で疲弊している中、業者にとってはまさに「死活問題」。もともと入札改革のきっかけとなった他県の談合事件は全国大手ゼネコンや県政トップらがかかわったことで、「そのしわ寄せが地方の中小零細業者に来るのはおかしい」というわけ。また、今回の入札改革で業界の現在抱える矛盾点も浮き彫りになりそうだ。

 地域要件30者で競争激化

 「応札可能者がなぜ30者以上なのか。厳しすぎるのではないか」―。4月13日に開かれた県議会土木委員会で出席委員から最も厳しい批判が集中したのがこの点だ。

 県が定める「原則30者以上」の地域要件は、全国知事会が昨年12月にとりまとめた指針「原則20~30者以上」のうち、「競争性を高めるため、より厳しい基準を採用した」(県総務部公共調達改革室)もので、地域事情などを反映したものではない。不祥事の当事者である福島県(50者)など一部を除くとかなり厳しい水準。現行の指名競争入札制度の体制下では応札可能者数10~15者程度に設定されており、それが一挙に2~3倍へ拡大するわけで、受注チャンスも大幅にダウンすることになる。

 岡山、倉敷を除けば建設業者は限られ、現在は地元中心に指名競争のメンバーが組まれているが、県民局や支局を基本に地域要件が設定されるとは言え、今後はより経営体力のあるライバルの参入は必至。体力に劣る大都市周辺の業者からは「理屈上はこちらも新たなエリアの仕事を受注すればいいということになるが、現実には難しい」と悲観的な声が漏れる。

 段階的に1000万円へ拡大

 入札制度改革のもう一つの目玉が、一般競争入札(条件付)の対象範囲(現在は2億円以上)を、19年6月から4000万円以上、20年度から1000万円以上へと段階的に拡大する点。地域要件の設定と合わせて、県が「地域産業の保護・育成に配慮した」(公共調達改革室)ポイントで、広島県が10月からいきなり1000万円以上を対象にするのと比べると“緩やかな移行”を目指している。業界団体である(社)岡山県建設業協会(会長・逢沢潔アイサワ工業(株)社長)からの陳情もあり、その意向を反映した格好だ。

 17年度工事実績で見ると、土木部・農林水産部の合計で2688件、金額ベースで620億7000万円の工事に対し、1000万円以上の工事が1462件(54.4%)、559億7000万円(90.2%)で、一般競争入札の比重が一気に拡大する。地元では、完工高1084億円(18・3期)の(株)大本組(岡山市)や同360億円(18・5期)のアイサワ工業(同市)など、国レベルの発注工事で既に一般競争入札の洗礼を受けている大手は別にして、今回の改革で中堅以下の業者には直接影響が出そうだ。

 特に多くの中小零細業者の場合、もともと利幅の見込みにくい建築部門より「予定価格水準で受注できれば」の条件付きではあるものの、土木工事で利益を上げる構図で成り立ってきただけに、改革による受注減は「死活問題に直結する」(県南の業者)問題となる。

 不適格業者の参入増懸念

 談合に対する社会的批判に加え、地方自治体の財政状況を考えると公共工事の先行きにも期待が持てない。改革に対する反発の一方で、中小業者の間にも「民間建築や新分野への進出で生き残るしかない」と “やむなし”のムードも広がりつつあり、こと談合問題に関する限り「入札業者が公表されなければ調整しようがなく、談合はできなくなる」(ある業者)と効果も見込める。ただ、品質確保や業界育成などの総合的な観点からは課題も多い。

 業者が特に危ぐするのが「施工能力のない業者の参入が増えるのでは」という点。「現在の指名競争でも施工能力に疑問符が付く業者の参入が見受けられるのに、ましてや一般競争となると…」(岡山市内の業者)というわけ。最近、建設業協会に非加入の「アウト」と呼ばれる業者が増えているが、その中には施工能力に問題があり、事実上のペーパーカンパニーも含まれると言う。

 業界筋によると、以前は「公共工事は協会員優先」が暗黙の了解だったとされるが、バブル経済崩壊以降は状況が一変。施工能力のない関連業者に下請けさせることで自らは利益を確保して施工実績も上積みするなど、建設会社をランク付けして発注する公共工事の規模を決める経営事項審査(経審)の盲点を突く格好で、業績を伸ばす業者も出現。協会と自治体の協定に基づき、公共性が高く収益性は見込みにくい災害復旧工事などを請け負う協会員からは「今のような体力勝負では真面目にやっている業者が持たない。入札改革をうたうなら、業者選定を真剣に考えてほしい」と強い不満がある。

 安値受注に拍車かかる?

 その構図の中で、利益の源泉だった土木工事のダンピング合戦が横行。岡山県には極端な安値受注を防止するため、3000万円以上の工事を対象に「低入札価格調査制度」がある。落札予定価格の3分の2とされる下限の調査基準価格を下回る金額を提示した場合、見積もりの内訳を精査し、合理性がなければ発注を取り消す制度だが、県では「調査対象になるのは1割に満たないレベルだが発生しており、調査の結果、発注を見送るケースもある」(土木部技術管理課)と話す。

 自治体の財政難で予定価格を下回るほど“行政のコスト削減につながるから良い”という風潮もあるが、「そもそも予定価格は自治体が綿密に積算した数字。それを大幅に下回るなら、まともな工事などできない」はず。ではなぜ採算度外視の安値受注に業者は走るのか。業者数が減らず工事の絶対数が減っている中、「そこまで価格を下げないと仕事がとれなくなっている。官庁の場合、施工実績が将来生きてくるし、会社として売上高を確保する必要もある。人や機械を遊ばせておくよりはまし」と、現在も調査対象となった工事を施工中の業者はその苦しい胸の内を語る。

 今回の改革では、調査対象となるラインも5~6%引き上げられるが、先の業者の嘆きからも伝わるように、「低価格入札=手抜き、低品質」とは必ずしも言えない面があるだけに悩ましい。

 社員を遊ばせるよりまし

 また、経審の点数を維持するため、「総合評点(P)の算出式で35%と比重の高い完成工事高(評点X1)を上げようと無理な受注に走るケースは多い。この構図は昔から変わっていない」(県北の業者)と言う。数多くの工事をこなし、完工高を維持するためにも社員や機械はある程度必要。経審の算出式の評点X2とZで職員数、技術者数が影響し多い方が有利だ。

 経審も現在国で算出方式の見直しを進めているが、批判の強い完工高の比重を35%から25%に下げる一方、施工能力の比重を高めようという方向だ。県の改革でも不良・不適格業者の排除を狙い、「技術者を専任で配置できること」などとしており、技術者を含めたある程度の社員数は欠かせない。

 そうした中で、競争により完工高が減るか、不安定化すると固定費負担が相対的に重くなる。ここ数年、公共投資の急激な縮小を背景に、業界ではリストラを急ピッチで進めてきた。固定費負担で財務内容が悪化し、今度は経審での経営状況の評点Yに悪影響を及ぼしてきたためだ。
矛盾する話だが、固定費圧縮で合理化する、切り過ぎると今度は工事の受注機会を失う恐れがある、やはり人や機械は要る―そうしたジレンマに陥っているのが現状。一般競争入札の拡大による競争激化は、今後この問題をさらに浮き彫りにしそうだ。

 官民とも事務負担は増加

 また、一般競争の拡大で、入札に関連する双方の事務負担の問題もある。「今までは指名願を年1回出して級が決まり、あとは指名入札の声が掛かるのを待つだけだったが、一般ではその都度手を上げる必要がある」と、業者側の事務作業は確実に増加。行政側では、入札者の参加条件の確認を入札後の事後審査にすることで軽減する面もあるが、やはり増える部分もある。「いろいろなデータを標準化する作業を並行して進めており、運用面の工夫で対応したい」(県技術管理課)としているが、どの程度の負担増になるかは未知数。

 また、改革には価格面だけでなく技術面を評価し技術評価点を加算し落札者を決める「総合評価方式」(18年度から一部試行)の拡大も盛り込まれているが、全国レベルでは同一業者が同一の技術提案を総合評価方式で別々の官庁にしたところ、片方は評価され片方は評価されなかったという例もある。また、「国レベルはともかく、自治体レベルで審査能力があるのか」という疑問も出てくる。

 競争性の確保と業者の保護育成という対立する要素の折り合いを付けてまとめようとする以上、混乱も出てくるのは避けられないが、行革で出先事務所の統廃合が急速に進み、現状でも職員負担は増加している。その中での改革で工事の品質低下などを招いては「何のための改革か」となりかねず、関係者には幅広い視野での対応が不可欠だ。


 岡山県入札制度等改革推進計画の概要

 「コンプライアンスの徹底」

 コンプライアンス委員会を設置する。服務規律アドバイザーをコンプライアンス監視員に名称変更し独立した通報窓口とする

 「一般競争入札(条件付)の拡大」

 19年6月から4000万円以上の工事に、20年度から1000万円以上の工事に対象を拡大する。地域要件ではランクや工事規模などから入札可能者がおおむね30者以上になるように設定。土木一式の場合、8000万円以上2億円未満で各県民局区域を3~5分割(AA、Aランク格付け業者)、4000万円以上8000万円未満で県民局区域を6~8分割(A、Bランク格付け業者)

 「低入札価格調査制度」

 共通仮設費の数値基準(発注設計図書の金額に対する率)を50%から70%に、現場管理費の数値基準を20%から40%に引き上げ、規制を強化する

 「指名競争入札」

 19年6月から指名業者名の公表を事前から事後に変更。指名業者数を現行の2倍程度にする
 
 「総合評価方式の拡充」

  評価項目や審査手続きの簡略化を検討し、19年度から対象工事を順次拡大。大規模工事では一般競争入札(条件付)との併用を図る

 「ペナルティの強化」

 指名停止期間を最長12カ月から最長24カ月に延長する。違約金特約の額も契約額の10%から20%に拡大する

 「職員の再就職制限とOB等からの働きかけ防止」

 職員の退職前の職務と密接な関係がある企業への再就職を制限。関係法令の改正の動向を見ながら検討

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