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果物あれこれ

 真夏、ロンドンの果物屋で桃を買ったことがあります。小さな、果肉の硬い桃で皮は真っ赤。ふと“老嬢(オールドミス)”などという言葉が浮かんできました。

 旅先のこと、ナイフもないしどうやって頑なな風情の桃を食べようかと思って回りの人々を観察してみると、ズボンでシュシュッと毛をこすり落として丸かじり。

 日本では考えられない食べ方だなあ、と感心しつつ真似してみたところ案外いけてました。皮の直下が一番おいしいのはどの果物でも共通のようです。

 それはともかく、こんな桃しか食べたことのないイギリス人に岡山の白桃を食べさせたら気絶するんじゃないでしょうか。白桃は世界の果物の頂点に位置する、と私は勝手に信じています。

 生育期に高温が必要な桃に対し、西洋梨はイギリスやフランスの風土によく合っていて種類も豊富。中でも「ドワイエンヌ・デュ・コミス」という舌を噛みそうな名前の梨は果肉が青味を帯びて、味は天然アイスクリーム。白桃に匹敵する果物の女王です。日本でも長野の育種家が苗を販売していますが、気難しいこの梨は岡山では育ちません。

 3つ目はアルジェリアのオレンジ。夏みかんぐらいの大きさがあり、皮がむきやすく、甘さ、香り、歯触り、清涼感いずれをとっても文句の付けようがないです。

 この絶品オレンジはヨーロッパでも見かけたことがなく、私にとっては今や幻の果物になってしまいました。

本誌:2007年3.19号 15ページ

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