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アルジェリア紀行(7)

 昨年来重病説がささやかれているキューバのカストロ首相の最新映像をテレビで見ました。

 1926年生まれということですから現在80歳。弱々しい老人の姿になっているのは当たり前なのに、私の脳裏をときたまかすめるカストロはいつも力強く若々しい。

 1972年、カストロが東欧に行く途中、独立間もないアルジェリアに立ち寄り、私が働いていた工事現場も視察に訪れたことがあります。

 今ほど、セキュリティがやかましくなかった時代のこと、工場内外から集まった何百人という群衆や労働者が歓呼の声をもって迎えました。

 中でも女性たちがトンビの”ピーヒョロロ”を思わせる裏声を張り上げながら歓迎する様にはびっくり。映画「アラビアのロレンス」のワンシーンが目に浮かぶようでした。

 群衆に押されて最前列に出てしまった私は幸運にもカストロと握手できました。分厚く、温かく、柔らかな手の感触が今も私の手に残っています。カストロは当時46歳。アルジェリアはフランスから独立してまだ10年目、そして私は23歳の若者でした。

 今でこそ「カストロと握手したことがある」などと若い人にしゃべっても相手にもされませんが、学生時代、キャンパスにはキューバ革命の同志、ゲバラの肖像画が高々と掲げられていました。

 言ってみれば、カストロやゲバラは“アメリカ帝国主義”に勝利した大スターだったのです。

 それから35年。東欧から社会主義国は消え去り、若き革命戦士は老いと病に蝕まれ、今や、アメリカも喉にささったトゲのことなど気にもしていない様子です。

本誌:2007年3.12号 12ページ

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