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連載記事

認知症

 「認知症」という病名が定着してきましたが、認知症の母の言動を注意深く観察していると、果たして認知能力に問題があるのか疑問に思えてきます。

 亀井静香氏がテレビに出ていると、「あ、健ちゃん」などと長男の名前を呼んでいます。角張った顔の特徴を非常によく捉えているのです。

 味覚は鋭く、肉1つとってもスーパーの肉と専門店で買った肉の違いは瞬時に判別。スーパーの肉は細かく切っても、文字通り喉を通らないのです。

 五感だけでなく第六感も研ぎ澄まされていて、私が密かに久しぶりに上京しようと計画を練っていると、「私を置いて東京に行くんだろう」と先制攻撃を仕掛けてきます。

 父にも内緒にしているのに、なぜばれてしまうのか全く不思議。母の場合は認知不全症でなく、認知過敏症と言った方がふさわしいようです。

 では、かつてのスーパーウーマンがなぜ身の回りの事1つできなくなってしまったかというと、ベースには運動器官の決定的な衰えがありますが、最も重要な原因は短期の記憶がうまくできないことにあるようです。

 行動の不都合の多くは、記憶をある程度連続的に保持できないことに起因していることを見過ごして、判断力や感覚の鈍化と取り違えると、この病気の本質が見えなくなってしまいます。

 一日の大半を寝ていることが多くなった母ですが、高い倫理観や義務感、息子や孫にそそぐ慈愛など、母のいいところはいささかも損なわれていないことに大変感謝、私から見れば母の病名は単に「記憶力低下症」です。

本誌:2006年2.13号 12ページ

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