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見張り婆さん

 私が住んでいる岡山市妹尾という町は戦災にあわなかったせいもあり、やたらと道が狭いのです。民家の壁や軒に車をぶつけないよう運転には細心の注意が必要です。

 そんな路地沿いに一軒の古い家があって、いつもお婆さんが家の上がり口から体を半分道に出した格好で目の前を通過する車や歩行者を見ています。

 1年365日、まるで置物のように暑くても寒くてもじっと外を見つめるお婆さん。彼女の生きがいは?、認知症になりかけてるのかなあ、家族はデイサービスにでも行かせてあげればいいのに、、、などと気になる存在です。 

 ところが先日、ウォーキングでそこを通りがかったとき、お婆さんの鼻先をかすめて歩くのがはばかられるような気がして、道の反対側にある2坪ほどの空き地を斜めに横切った時、長年の謎が解けました。

 突如、お婆さんは椅子から立ち上がって大声で「あんた、なんでそこを通るんでぇ?」と私に詰問。どうやら私が空き地と思っていた場所はお婆さんの私有地らしく、ふとどき者がうっかりそこを横切ったりしないよう全身全霊を込めて見張っていたのです。

 あっけにとられて返す言葉も見つからない私に、お婆さんはとどめの一発を放ってきました。「あんた、そんなことしょーたら人から笑わりょう!」

 人は生きがいがある限り呆けない!デイサービスで童謡を歌ったりしているうちに、自分の人生を次第に失っていくお年寄りたちと違って彼女の人生は現役そのもの、恐るべき見張り婆さんです。

本誌:2005年11.21号 12ページ

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