WEB VISION OKAYAMA

連載記事

「青空」再出発

 牛窓に「LIFE&ART青空」という喫茶店があります。グルメ雑誌や旅行関係の雑誌でよく取り上げられているので、休日には関西方面からはるばるやってくるお客も少なくありません。

 店の女性オーナーSさんは大学時代一緒に心理学を専攻した仲間、卒業後は畑違いの陶芸の道に進み、たまたま岡山出身の陶芸家と縁あって、20年ほど前に牛窓の地に工房と店を開いたのです。

 古民家をほぼ原型のまま使った店には二間続きの座敷もあって、多くの有名無名の芸術家達の作品の発表の場となっていました。いわば牛窓文化の最先端基地というべき様相を呈して、いつ行っても観光客に混じって常連さんたちのにぎやかな話が聞けたものです。

 それなのに、6月初め受け取った企画案内のハガキには大ショック。8月中旬の企画展を最後に郷里の岩手県一関に店ごと引っ越すというのです。

 私をはじめ、この店を心のオアシスにしてきた人にとってはまさに行き場を失った残念さでいっぱい。岡山で一番おいしいアイスコーヒーを求めて片道1時間かけて車を走らす喜びも消えてしまいました。

 ところがSさんは、お客の感傷に暗くなるどころか、「ちょっと遠いけど一関まで来てね」と妙に晴れ晴れとしています。牛窓文化に深く誠実に関わって20年、その間に得た人々とのつながりなどたやすくうち捨てることは男の私には真似できないな、などと思うのですがやはり女性は強い!

 学生時代の聡明さと前向きな姿勢は30数年たっても少しも衰えていない彼女。郷里での再出発を祝福したいと思います。

本誌:2005年7.1号 16ページ

PAGETOP