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小豆摺り(あずきすり)

 子供のころ、父がよく不思議な話を聞かせてくれました。なかでも不気味だったのは「小豆摺り(あずきすり)」の話。

 竹藪がうっそうと茂る山道を日が暮れてから帰宅を急いでいると、頭上からザァザァと小豆を摺る音が聞こえてくる。その音に肝をつぶさんばかりにおびえながらやっと我が家が見えるところまでたどり着くと、離れ座敷に灯りがついているのが見える。ところがいざ帰宅してみると離れは真っ暗。お母さんに尋ねても誰も離れに行ったりしていないという。

 父によると、「小豆摺り」というのは猿と河童のあいの子のような怪物で、竹を3本組み合わせて又になったところにすり鉢を据えて夜な夜な小豆を摺って通行人をおどかすそうです。街灯ひとつなかった時代の暗闇が作り出した幻覚だったのかもしれません。

 しかしながら不思議なビジョンを見てはおびえるという父の性質は息子の私にもそっくり伝わっています。

 小学校低学年のころ、学校から帰ってくると家の裏の畑に村人がたくさん集まって穴を掘っている。私が何の穴を掘っているのか尋ねたら、村人は手をとめていっせいに振り返る。「ここにお前を埋めるんじゃ」と言った隣のおじさんの口元に光る金歯が今でも忘れられません。

 西岸良平の漫画「三丁目の夕日」(ビッグコミックオリジナル連載)に出てくる少年も不思議な体験をいっぱいしますが、すべからく子供というものは親がしっかり見守って、かりそめにも逢魔が時に神隠しにあうことは絶対避けなければなりません。子供をとりまく環境は小豆摺りの時代よりはるかに危険になっています。

本誌:2005年1.11号 14ページ

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