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ヒロポン

 近くの交番に電光掲示板がありいろんな防犯標語が流れています。ある日、高齢の母を車に乗せてそこを通りかかったときのこと。母が標語を声に出して読み始め、突然「暴力団ナンバーワン!」というのです。「えっ?」と思って電光掲示板を見たら、「暴力団No!」と書いてあり大笑い。標語はほかにも麻薬・覚醒剤の恐ろしさを訴えたもの、シートベルトの着用をうながすものなどがあります。

 覚醒剤といえば小学校低学年のころ「ヒロポン中毒患者=世にも恐ろしい化け物」といううわさが拡がり、学校帰りの田舎道はとりわけ危険だと思われていたのです。なんでもヒロポン男は麦畑に住んでいて、突然子供を襲うという!今でいう「口裂け女」のたぐいだったのかもしれません。

 4,5五年前、このヒロポンという何とも変な名前の覚醒剤のなぞが一挙にとけました。図書館で終戦直後の農業雑誌を見ていたら、何とヒロポンの広告が堂々と載っているではないですか。製造・発売元は大日本製薬。その広告には道端に座って休憩しているお百姓さんのイラストがあって、キャッチコピーは「疲労に一本」でした。なるほどそれでヒロポンか!と納得。現在のスタミナドリンク感覚だったのでしょう。

 ヒロポンはもともと戦闘機に乗る兵士が夜間でも目をぱっちり開けて敵艦に向かえることを意図して開発。戦後になって軍需用途を失い、行き場のなくなった在庫品が民間に出回った結果、未曾有の覚醒剤中毒事件を引き起こした、というのが真相のようです。

 学校帰りの子供を震え上がらせたヒロポンにもこのような歴史があったとは!

本誌:2004年9.21号 15ページ

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