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食べること

 両親の介護を始めてまる3年。在宅介護の頭痛の種は食事のメニュー作りです。親の好みを考え、栄養の補給が十分でき、しかもバラエティに富んだ料理を作る、これはなかなか至難のワザです。これをあと何千回も考えないといけないのかと思うと疲れがどっとでてきます。

 まず親の食べ物に対する嗜好ですが、大正生まれの両親は好き嫌いを主張できるような境遇で育ってないので、「きょうは何を食べたい?」と尋ねても「何でもいい」としか言わない。そのくせ魚を出すと「たまには肉もいいなあ」と嫌みをいう。

 栄養という面では、昔お隣に住んでいた老夫婦は、三食とも麦飯、いりこ、みそ汁、それにホウレンソウのおひたしぐらいしか食べていませんでしたが、ともに90歳になっても呆けることもなく、まただれの世話になることなく天寿をまっとうされました。

 この老夫婦の食事にはバラエティなどという発想はほとんどないし、きわめてシンプル。食後も食器をお茶ですすいでそのままお膳の下の引き出しに収納するだけ。テレビで見た永平寺の修行層の食事風景がこんな感じでした。

 それに反し、カロリー、タンパク質、ビタミンの摂取量などをベースにして作られたアメリカ式栄養学の呪縛がいまでも頭の片隅にある私は完璧な食事を提供しようとつい張り切りすぎてしまいます。

 人は生きていく限り食べなければならないし、楽しく食べなければならないのですが、もう少し気楽に構えないとあとが続かないような気がするこのごろです。(康)

本誌:2004年8.1号 16ページ

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