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魔法のフライパン

 三重県にある錦見鋳造という町工場が開発した「魔法のフライパン」が静かなブームになっています。

 今までの鋳物製のフライパンは、肉厚が4.5ミリもあってずしりと重く扱いにくかった点に町工場の社長が目を付け、本業そっちのけで研究を重ねた結果、肉厚1.5ミリという驚異的に軽いフライパンの開発に成功したというものです。

 本体と取っ手が一体構造になっていて丈夫であること、高熱で空焼きしてもびくともしないこと、油のなじみがよくて焦げ付かないこと、熱効率がよく調理が手早くできること、などなど厨房に出入りする男性にとってこのフライパンはたまらなく魅力的です。一万円前後の値段も本物の道具であることを証明しているようで、かえって購入意欲をそそります。

 テレビでも何度か取り上げられて、実際にハンバーグがとてもジューシーに焼ける様を見せつけられてはどうしても欲しくなってしまい、私もさっそく工場に注文を入れました。すぐに受注確認のメールがきましたが、何と生産が追いつかず発送は半年待ちになるとのこと。ひとつひとつ手作りなので一日に30個しか製造できないそうです。

 多くの町工場が大企業の下請けとして、納品単価を極限まで抑えられ、いくら働いても利益が出ない構造になっているのと対照的に、錦見鋳造が古いテクノロジーに新たな命を吹き込み、半年先まで受注を勝ち得たことは、これからの中小企業が希望を持って生きていくための道筋を示しているような気がしてなりません。(康)

本誌:2004年5.11号 16ページ

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